今井健雄建築設計事務所 TAKEO IMAI ARCHITECTURE OFFICE

クマゼミのこと

しつこいですが、蝉について書きたいと思います。
暑さが続き、さすがに蝉の声も弱々しくなってきましたね。

私が子供の頃、クマゼミを捕まえることは憧れでした。
当時、捕まえられるセミと言えば、ほとんどがアブラゼミ(次にツクツクボウシ)でしたから、ミンミンゼミやヒグラシほどではないにしろ、透明の翅を持つ大型のクマゼミは、とても魅力的な存在だったのです。
大阪市内では考えられませんが、京都市内、たとえば東山や岩倉などでは、普通にミンミンゼミの鳴き声が聞こえてきますね。おそらく普通の人は、全く気にも留めないどころかどうでもいいことなのでしょうが、四日市の市街地育ちの私にとって、ミンミンゼミは鈴鹿山脈の麓まで行かないといない貴重な存在でしたので、その声が少しでも耳をかすめようものなら、何かもう本能的に敏感に感じ取り、未だに捕まえたい衝動に駆られるのです。そういえば、東京では都市部でも普通にミンミンゼミが鳴いていますね。関西ではありえないことなので、それはもうかなり衝撃的な出来事に感じてしまいます。

当時、クマゼミは高いところばかりに留まっていました。父に物干し竿にタモ(虫取り網のこと)をくくりつけてもらい、その取り回しの悪いタモで捕獲に挑んでいました。そう簡単には捕まえさせてはくれませんでした。構えた途端、すぐ逃げてしまう。そう記憶しています。今、住んでいる大阪市内は、いたるところクマゼミだらけです。しかも低いところに留まっていて、動きも鈍いのですぐ捕まえられます。都市部の気温上昇により個体が増えたらしいですが、クマゼミの地位が落ちたというか、ありがたみがなくなってしまった感は否めません。
それにしても、いつからこんなに捕まえられやすくなってしまったんだろう。

気になって、いろいろ調べていくと、腑に落ちる理由を見つけることができました。
定かではありませんが、どうもセミは個体密度があがると警戒心がなくなる傾向にあるらしい。
そういえば、従弟の家に植わっていた蜜柑だったか、クロガネモチの1本の中木に、おびただしい数のクマゼミがとまっており、その従弟をうらやましく思うと同時に、なぜこのクマゼミたちは逃げないんだろうと不思議に思ったことを思い出しました。あと以前、素数ゼミの本を読みましたが、40/㎡にもなるという密度の高いそのセミもやはり警戒心は全くないらしい。

ということは、密度の低いところにいるクマゼミは、昔と変わらず、俊敏なのかも。
子供の頃の私のためにも、クマゼミはそうあってほしいと思うのです。

朝、成虫になったクマゼミをリリースするところ。

2023年08月24日 |